休憩至上ism

よく勉強してよく休む

まだ見ぬ植物学者

「このビル内で,フランスの植物学者パトリックブランの作品が見られると聞いたのですが」

客入りもまばらな金曜日のお昼頃,ひとりの男性が受付に現れた

 

このギャラリーでは現在インドの作家の作品を展示している

その作家について,ひととおり答えられるようにはしているものの,

ビル内の他の区画についてまで把握していない

 

「パトリックブランですか...? お調べしましょうか」

すぐには分からないという様子を見せてみる

だいたいの人は時間がかかりそうだと思うと去っていく

彼は立ち去らない

好奇心の強うそうなキラキラした目で成り行きを見ている

 

結局,従業員用のエレベータで一階に降り,

ビルの管理スタッフのところへ彼を連れて行った

そこで説明をバトンタッチしてもらった

スタッフは彼を外に連れ出し,どこかを指差している

私もついていき,側で見守った真冬だがいつもより少し暖かい

しばらく後,

彼は晴れ晴れとした笑顔でスタッフと私にお礼を言い,去っていく

 

日報で上司に報告したところ,

パトリックブランの作品は現在撤去されているようだ

彼はどこに向かって歩いて行ったのだろう

よい一日になったことを願う