宝石の国3巻 - 美しい余白と観念的な闇
冬のお話でした。
絵にもストーリーにも余白が多い印象で、特別なステージに入ったかのよう。
宝石たちが冬眠に入るシーンがお気に入りになりました。
もふもふの大きなお布団にうもれて皆が「おやすみなさい」を言うシーン。
うまく言えないですが、あんなふうな幸せがほしいななんて思ったり。
しかしこの余白の多い特別な美しい巻は、1〜2巻と比べて残酷で不穏な巻でもありました。
見るものの不安を反射し増幅させるという、流氷の存在がこわい。
あのような抽象的な敵のような存在が出てくると、作者は心の世界で生きている人なのかなという印象になります。
私も悩みがちな人間なのでわかります.......人生は心との対話であり戦いであり探索であると。
このような敵は私が観測した中では例えばハリーポッターの吸魂鬼(鬱の具現化だと思います)であったり、
ミヒャエルエンデの「はてしない物語」の触れると虚無になるという黒い影であったりします。
またアプリMonument Valleyでは全体を通してそういった面が感じられます。
Monument Valleyはいままでに体験した中でいちばん美しいゲームです。秋冬に誰かと一緒にやりたい...
結局、冬になりこの巻で初めて登場したアンタークチサイトは冬の間に月に連れて行かれてしまいます。
3巻、キャラクター所感
アンタークチサイト:普段は液体でいて、冬になると結晶化して起きてくる、そんなキャラクタがいるとは。
忠誠心が非常に強くて、月人に連れ去られる瞬間にも「先生が さびしくないように 冬をたのむ」と言います。
窮地に陥ったときに他の誰が心に浮かぶ人は行動原理が非常に一貫して尊く美しいです。
フォスフォフィライト:アンタークチサイトが連れ去られてから人が変わったようになっています。
腕が合金になったのもあり、この巻の最後から突然強くなりました。
不眠にも悩まされノイローゼ気味になっているように見えますが、楽天的なフォスフォフィライトは戻ってくるのでしょうか。